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歯の神経治療

歯の神経はどうなってるの?

ご存知かとは思いますが、どんな歯にも中には神経 (と血管) が通っています。
歯の神経というのは、前歯では1本、奥歯では2~4本、あるいはもっと細かく分かれていることもあります。この神経があるお陰で、私たちは歯に触れたものが熱いか冷たいかを感じたり、虫歯になってもしみる感覚でそれを気づくことが出来ます。

どの神経もアゴの骨の中の太い神経へとつながっています。ときどき、ある1本の歯だけが悪くなっているにも関わらず、他の歯全体が痛むような気がする場合がありますが、これは神経が大きな束となって1本に収束しているためです。

どんなときに神経を治療するの?

歯の神経を治療する必要があるのは、主に虫歯によって菌が神経まで到達してしまった場合です。
上図のC1・C2のように、虫歯の進行が歯の表面のエナメル質や象牙質までなら、神経は治療しなくても大丈夫です。
ところが、神経のすぐ近くまで進んでしまったり (C3)、あるいは神経を腐らせるほど進んでいると (C4)、そのまま神経を残して治療を終わるわけにはいきません。

歯は虫歯になると、それを「冷たいもの、甘いものがしみる」といった感覚で危険サインを出してくれます。これが歯の中に通っている神経の働きです。上図のC1・C2がそういった症状が出る状態です。

ところが、しばらくこれを我慢していると、今度は「温かいものがしみる」「ズキズキ痛む」「痛みが簡単に治まらない」という状態に変化します。これは虫歯の菌が神経まで到達してしまったことを示します (C3)。

いったん菌に侵された神経はほとんどがそのままにしていくと自然に死んでしまったり、腐ったりします。菌は神経の管の中で増殖して、今度は「噛むとひびいて食事ができない」「じっとしていてもズキズキする」「痛み止めが効かない」「頬まで腫れた」「リンパが腫れた」という最悪の状態にまでなってしまいます。このとき神経の管の中は、ウミでいっぱいと考えて下さい。管の中だけでなく、歯を支える骨の中にまでウミのフクロをつくることもあります (C4)。

神経が菌で侵されてしまうと、神経は汚れた異物と同様になりますので、取り除いて消毒しなくてはなりません。

歯の神経治療の流れ

  1. 診 断
  2. 虫歯で痛んだ神経の管に細い針を入れて、歯の根の長さを測ります。この作業が非常に大切です。

  3. 汚れを除去
  4. 神経の管の中の汚れを、根の先端まで清掃器具で少しずつ丁寧にかき出します。

  5. 密 封
  6. 痛みやウミが無くなったら、根の先端まで防腐剤をつめて密封します。

神経治療のその後について

さて、神経の治療を必要とする歯は、多くの場合虫歯で歯の頭部分が崩れてなくなっています。噛む機能を取り戻すためには、元のような歯の形に作り直さなければなりません。

  • 神経を治療した歯は、まず中に金属の土台を作り、それを土台として歯の頭部分となる冠をかぶせる二重構造で治療します。 歯の根の先端部分に詰まっているのが、神経を治療してつめた防腐剤、その上が金属の土台です。さらにその上に歯の頭部分をかぶせています。こうやってはじめて噛む機能を担える歯を取り戻すことができるのです。

    ただし、図を見てもおわかりになるでしょうが、このときご自分のもともと持っていた歯は、歯の根の部分しか残っていません。しかも、中に入っている金属の芯は、本来の根の管の太さよりずっと太いのです。つまり、残っているご自分の歯の根の壁は非常に薄い状態であるといえます。

一度神経を取り除いた歯は、いわば「生きていない歯」。生きている歯に比べて歯の質は弱くなっています。ですから、硬いものを噛んだり、強い力で食いしばったりすると、残っているご自分の歯の根にひびが入ったり、折れたりする危険性があります。
歯の頭部分が元のようになったからといって、噛む力はほどほどにしないと、この歯を失うことになりかねません。

人間の体の中で、一度死んでしまったものを残すことができるのは歯ぐらいだと言われています。神経を治療した歯は、いわば血の通わない枯れ木のような状態です。
ですから、形は元のようになったからといって、同じように噛む力を加えるととても長持ちはしません。大切に気を配って、ようやくお口の中に残せる、そんなつもりでいたわる必要があります。できれば神経を取られないように、毎日の予防を心がけましょう。